梶井基次郎さんのフレッシュな文体が好きで
最近よく読んでいたのだけれど
たまたま調べた梶井さんの年譜を読んで
宇野千代さんの名前を見つけた。
梶井さんは、宇野さんに惹かれていたらしい。
おや、と思った。
以前、宇野さんの「生きてゆく私」を読んだ時、
宇野さんを慕っていた詩人だか小説家の男が
死んでいくシーンを思い出したからだ。
調べてみると
果たして、その男は梶井さんであった。
「…僕が死ぬときには宇野さん、
大阪の家へ来てくれますね、僕の枕許で、
僕の手を握っていてくれますね」
と懇願して死んでいく梶井さんのことが書かれていた。
そんな風な事を言う梶井さんもすごいが
言わせる宇野さんもすごい。
その続きは確か、宇野さんはあっさりと
「はいはい、握っていてあげるわよ」
と答え、
その約束は果たされぬまま
すぐに梶井さんは亡くなったんだったような…
梶井さんの作品を知る前に読んだ時は、
「ふうん」という感じのエピソードだったのだが
梶井さんの世界に触れてから、その話をみて
なんともせつない話やなあ…と思った。
そんな科白を女性に言えてしまう
男の人(病弱な天才芸術家に限る)が
カッチョいいと思うのは、私だけだろうか。
でもやっぱり、梶井さん、
ワンパクでもいい、
せめて私より長生きしてくれ。
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